高知医療センターは、クルマでJR高知駅から約20分の緑のなかにあります。平成17年に新築オープンのこの病院には、高知県が達成しなければならない夢がありました。それはひと言に坂本龍馬像(高知市桂浜)すれば、「量より質」の問題。人口に対する病院数、病床数。量において高知県はいずれも全国1位でした。しかし、なぜか患者さんが県外に流れていたのです。医療の「質」に焦点を当てた病院改革が急務だったのです。
まずこの病院は、自治体の病院改革として注目されています。高知県立中央病院と高知市立市民病院が統合・再編してできた病院であることです。
つぎは日本で初めての、病院のPFI(Private Finance Initiative)事業であることです。PFI法とは、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」。つまり、民間の知恵を活かし、公立の病院をうまく運営しようという病院改革です。
そしてもうひとつは、患者さんと職員のための病院改革です。院内キャッシュレスカード(ホスカ)が、日本で初めて、本格的に導入されたのです。
「院内キャッシュレスカード」に使われている技術は、ソニーが開発した非接触式のICカード「フェリカ」。JR東日本の「スイカ」と同じタイプのものです。スイカが電車に乗れるだけでなくショッピングもできるように、「院内キャッシュレスカード(ホスカ)」も幅広い使い方ができます。
まず、ベッドサイドでは、カードでテレビ、ゲーム、VOD(ビデオ・オン・デマンド)を楽しめます。「ウェブ・ドクター」と呼ばれる便利な医療コンテンツも利用できます。冷蔵庫もカードでOKです。
つぎに院内キャッシュレスカードは、患者さんの日常生活を支えています。ランドリー、コンビニ、レストラン、床屋さん、そして自動販売機、すべてカード1枚でOKです。
病院運営に実際にタッチしている担当者にお聞きしました。
Q、 院内キャッシュレスカードの患者さんの評判はいかがですか。
「私どもでは、毎週木曜日に病院のオペレーションについての会議を開いています」
「カード1枚を財布代わりに使えるのは、やはり便利です。病院内の現金はとかくトラブルのもとになっていましたから」
院内キャッスレスカードのもうひとつの顔は、病院のスタッフ、職員のIDカードとしての役割です。
個人情報保護法の施行以来、患者さんの個人情報管理は、病院セキュリティのキーポイントになっています。
院内では、職員専用の出入り口、カルテのファイル室、薬品室・・・。
セキュリティのレベルに応じて、スタッフの出入りの管理がされていました。
Q、 院内キャッシュレスカードの職員さんの評判をお聞かせください。
「私どもの職員は全員がカードを持っています」
「医師も看護士も薄着です。行きたいところに行けて、セキュリティは保証されている。しかも食事もカード1枚。これは、助かります」
「忘れたら・・・。もちろん病院に入れません。仕事もできません。・・・冗談、冗談(笑)」
私たち取材グループも、院内キャッシュレスカードを使い、ランチを食べることにしました。食堂は見晴らしがよく、やわらかな光が差し込んでいました。もちろんいただいたのはカツオ、ほどよく脂が乗ったその味は、やはり本場のものでした。
ちょっとややこしいのですが、高知医療センターのPFI事業について、もう一度考えてみます。
ここのPFI事業の特徴は、建設のための「ビルトPFI」ではなく、経営のための「運営PFI」であることです。病院の開設者である病院組合は高知医療PFI株式会社と、病院運営にあたるのです。私たちのインタビューに答えてくれた担当者も、高知医療PFI株式会社の方でした。病院組合と会社の事業契約は30年間。事業の目的は効率よく質の高い医療を提供することです。「患者さんが主役の病院」。その理念の解説にこう書いてありました。患者さんを「待たせない」、物を「持たせない」、「わかりやすい」病院。
院内キャッシュレスカード(ホスカ)は、コンテンツでお待たせしません、キャッスレスで現金を持たせません、医療情報でわかりやすい病院にしています。院内キャッシュレスカードは、PFI事業の未来の、大きな力になるでしょう。
高知医療センターから坂本竜馬の桂浜までは、クルマで10分の距離。私たちは、竜馬の銅像に前に立ち、院内キャッシュレスカード(ホスカ)による、平成の病院改革を報告しました。竜馬は表情を変えずにうなずいていた、ように見えました。
(※PFI事業契約は、平成22年3月に終了いたしました。)
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